明けましておめでとうございます。おかげさまでMycoLaboはサービスを開始してから2年が経過し、2回目となるどうぶつの真菌症統計を報告できることになりました。ここまで支えていただいたみなさまには、心より感謝申し上げます。
弊社は「動物の真菌症を治せる病気に!」を目標に活動していますが、それにはまずどんな動物にどんな真菌症が発生しているのかを知ることが大事な一歩と考えています。これまでの検査を通じ、今まで知られていなかった真菌症の病態が明らかになり、3報の英文論文と、16人の先生による学会発表につながりました。貴重なデータをご提供いただいた先生方、飼い主様に改めて感謝申し上げます。
今回、2022.2~2024.12にご依頼いただいた233件の検査のうち、データ利用にご賛同いただいた185件(173頭分)を集計しました。
|検査した動物の種類
鳥類が非常に多く全体の60%を占めました。鳥の中では文鳥が最も多く(26%)、次いでオカメインコ(19%)、セキセイインコ(18%)の順でした。またげっ歯類は12件のうち10件がデグーでした。
|検査した動物の性別
雄が全体の60%を占める結果となりました。ヒトの侵襲性真菌症は男性に多く発生するものが多く(1)、動物でも同様の傾向の可能性があります。
|検査した動物の病変部位
皮膚と呼吸器がほぼ同率で多く見られました。呼吸器の約80%は鳥類でしたが、皮膚では鳥類が占める割合は46%で、猫とげっ歯類がそれぞれ16%を占めました。
|動物種ごとの病変部位
鳥類は呼吸器病変が多く、げっ歯類は皮膚病変が多いという傾向が認められました。
|検出された真菌種
アスペルギルス属菌が最も多く全体の約23%を占めましたが、その他にも多種多様な菌種が検出されました。送付いただいた検体のうち、真菌コロニーが得られたもの(培養陽性率)は72%でした。
なお菌種名は、ご依頼いただいた検査の内容により様々な同定レベルが混在していることをご了承ください(遺伝子解析で同定、形態で同定、同定せずに酵母または糸状菌と報告)。
|動物種ごとの検出真菌種
鳥類ではアスペルギルス属菌が際立って多く検出されており、アスペルギルス属菌による呼吸器疾患の多さを伺わせます。猫で検出されたMicrosporum canis3件のうち、2件が皮下と腹腔内から検出されており、皮膚糸状菌症は必ずしも表在性ではないことが示唆されました。
|病変部位ごとの検出真菌種
皮膚からは特に多種の真菌が検出されました。皮膚は環境中の真菌胞子の付着も多く、病原性の判断に苦慮します。
真菌検査サービスを開始してから2年半という短い期間にも関わらず、新たな発見が相次ぎました。今までブラックボックスになってしまっていたどうぶつの真菌症に、光を当てる第一歩を踏み出すことができたのではないかと思います。これも検査をご利用いただいたみなさまのおかげと感謝の気持ちでいっぱいです。今後も動物の真菌症を取り巻く状況がより良いものになるよう調査を継続していきますので、ご協力いただけますと幸いです。
参考文献
(1) Egger, Matthias, et al. “Let’s talk about sex characteristics—as a risk factor for invasive fungal diseases.” Mycoses 65.6 (2022): 599-612.