
2025年3月20日(木・祝日)に大崎ブライトコアホールで開催された日本獣医エキゾチック動物学会検討会にて、弊社の検査を利用した3題の発表が行われました。
ゲップ病のフトアゴヒゲトカゲ(Pogona vitticeps)の肺で確認されたPurpureocillium lilacinum/まさの森・動物病院 /安田 賢先生
フトアゴヒゲトカゲはゲップのような行動を示すことが知られており、原因不明とされていました。今回、ゲップ症状を呈したフトアゴヒゲトカゲの肺に真菌が感染していることが確認されました。このことから、ゲップのように見えるこの症状が咳である可能性が示唆されました。
担子菌 (Lentinus squarrosulus) の感染による真菌性肉芽腫性肺炎が疑われたニシアメリカオオコノハズク (Megascops kennicottii) の1例/横浜エキゾチック動物病院/関根大樹先生
呼吸器症状を呈したコノハズクの肺からLentinus squarrosulus(和名:ケガワタケ)が検出された症例です。キノコの感染症というと驚かれることが多いのですが、実はそんなに珍しいことではなく、日本ではスエヒロタケ感染症がヒトと動物でしばしば報告されています。ヒトではキノコはアレルギー性真菌性呼吸器疾患にも関与していることがわかっています。キノコが起こす疾患について、今後動物でも解明が望まれます。
皮膚症状を呈したデグー (Octodon degus) より分離されたPenicillium 属菌についての考察/大相模動物クリニック/藤井ありさ先生
3頭の皮膚病のデグーからPenicillium pimiteouienseなどのPenicillium 属菌が検出されたという報告です。弊社の独自調査でも2頭のデグーと、新品のデグーの砂浴び用の砂から同菌が検出されています。Penicillium 属菌は環境中に普遍的に存在するため、皮膚などの無菌検体から検出された場合はコンタミの可能性もあります。しかしPenicillium pimiteouienseは海外の海岸で検出されたという報告のみで、日本の環境から一般的に検出される菌ではありません。この菌が別々の家庭で飼育されている複数の皮膚病のデグーと、新品の砂浴び用の砂から検出されたということから、砂を介した感染が起きている可能性も考えられます。
今回初めて本学会に参加させていただいたのですが、会場は満席で、参加者と発表者の距離が近く、とても熱のある学会でした。
エキゾチック動物と言われる動物は、体温が低かったり水棲だったり、免疫系の違いなど種々の理由で真菌症の発症が犬猫よりも多いようです。弊社の検査でも爬虫類や両生類のご依頼が増えてきました。どんな動物種でも検査は可能ですので、真菌症を疑った場合はご相談いただければと思います。