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2024年 第30回日本野生動物医学会大会でMycoLaboで検査を担当したカリフォルニアアシカの深部皮膚トリコスポロン症の発表がありました。

プレドニゾロン投与中のカリフォルニアアシカで発症した深部皮膚トリコスポロン症
岩尾一(新潟市水族館)、大村美紀(株式会社MycoLabo)、槇村浩一(帝京大学・医真菌研究センター)

 

26才の雌のカリフォルニアアシカの右後肢の指の外傷に対して抗生物質による治療を行っていたところに脊椎症を併発し、30日間プレドニゾロンの投与が行われました。

右後肢の外傷は悪化し、病変部の鏡検で菌糸が確認されたために培養検査が行われました。酵母のコロニーが発育し、この遺伝子解析によりCutaneotrichosporon cutaneumと同定されました。

C. cutaneumはトリコスポロン科に属する担子菌酵母で、以前はTrichosporon cutaneumと呼ばれていました。cutaneum(皮膚の)の名前の通り、ヒトや動物の皮膚から分離され、皮膚炎の原因となることがあります。トリコスポロン科の酵母は菌糸発育も盛んに行い、今回のように組織中では糸状菌のように見えることがあります。

C. cutaneumは土壌や水、室内環境からも分離されるため、非無菌検体から検出された場合はコンタミやコロナイゼーションの可能性を考慮する必要があります。今回は組織中に菌糸が観察されたことから単なるコロナイゼーションではなく、過剰な増殖状態にあると考えられました。抗生物質の使用による菌交代症とステロイドによる免疫抑制を背景として、環境や体表にコロナイゼーションしていたC. cutaneumが増殖して外傷の治癒遅延や悪化を招いたと考えられます。

水族館の動物は湿気と温度というカビが好む条件が揃っているせいか、真菌症の発生が多いようです。代表的なものはイルカやペンギンの呼吸器のアスペルギルス症です。アシカ、アザラシ、セイウチなどの鰭脚類には皮膚の真菌症(フサリウム症、マラセチア症など)がしばしば見られます。

 

ポテトデキストロース寒天培地、28℃、5日培養したC. cutaneum。外観は酵母。

 

鏡検像。酵母と菌糸が混在している。

 

 

 

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